西アフリカのエボラ出血熱感染拡大
(小論文時事問題)


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2014年8月、西アフリカでのエボラ出血熱の感染拡大を受け、WHOが緊急事態を宣言した(1)(2)。ここでは、大部分の日本人が自分と無関係だと感じている、エボラ出血熱に関する問題を整理する。

エボラ出血熱とは、高熱と激しい出血を伴う、致死率の高い伝染病である(3)。感染経路は患者の血液などの飛まつが感染源となり、十分な知識と対策ができれば感染の危険性は高くない。しかし、一度感染すれば致死率50~90%と非常に高く、有効な治療薬も開発されていない。2014年8月現在、2000名近くが感染し、その半数が死亡したと報道されている。

まだ規模の小さいエボラ出血熱をWHOが警戒する理由は、パンデミック(世界流行)の危険性をはらんでいるからだ。グローバリゼーションの発達した現代では、アフリカの一部地域で起きた伝染病が、翌日には地球の裏側で広まる可能性すらある(4)(5)。さらに、パンデミックの過程で病原菌・ウイルスが生存環境の変化で突然変異し、感染力・致死率が上昇する場合もある。エボラ出血熱に限らず、世界各地の風土病の多くは治療法が確立しておらず、自国への伝染病流入を食い止める対処しか有効な手だてがない。

今回のエボラ出血熱において、その対策の難しさが感染拡大を食い止められない原因となっている。そもそも西アフリカ諸国は、内戦の影響で政情が不安定で貧しく、国家としての有効なエボラ出血熱対策を打てていない。WHOではエボラ出血熱対策予算の八割が不足し、NGOの活動も規模が限定的であり、パンデミック対策にはならない。エボラ出血熱原因となるウィルス類は、抗生物質が効かず、治療薬への耐性を獲得しやすい生物学的特徴を持っているため、治療薬の開発は困難である(6)。インフルエンザワクチンが有効に機能しないことと同じ理由で、エボラ出血熱対策は難しいのだ。2014年8月現在、医療関係者150名が感染して半数が死亡する(2)など、エボラ出血熱の危険性も、治療の妨げになっている。

治療の難しいエボラ出血熱への対処法は、未然に伝染病流入を食い止めるしかなく、日本の防疫強化に世論も賛同している(1)。しかし、先進諸国が流入防止の対策のみに終始することは、エボラ出血熱感染地域を切り捨てることと同じである。WHOが訴えるように(7)、積極的な国際協力なしには解決しない事態となっている。東日本大震災の際に世界各国が救援に駆けつけたように、エボラ出血熱対策に日本政府がいかに協力していくかの議論が必要とされている。

※このような課題が小論文で出題される場合、「日本がグローバル社会の中でどう行動すべきか」という倫理観が入り込みやすい議論を、いかに論理的に整理して自分の意見と結びつけるかが重要である。可能であれば、この話題に関して友人、先生、親とディスカッションし、色々な人の意見を聞いてみよう。

○エボラ出血熱に対する報道<参考資料>

(1)各新聞社社説

(2)JB PRESSによる詳細な記事

○エボラ出血熱とは

(3)エボラ出血熱(Wikipedia)

○伝染病の脅威とグローバリゼーション

(4)新山智基(立命館大学大学院先端総合学術研究科PD研究員)「グローバリゼーションと顧みられない熱帯病」

(5)押谷仁(東北大学大学院医学系研究科微生物分野教授)「グローバル化する感染症の脅威にどう立ち向かうべきか」生命健康科学研究所紀要 Vol.7 (2010)

○薬剤耐性

(6)小林一寛(大阪府立大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻客員教授)「薬剤耐性のはなし」

○エボラ出血熱対策

(7)WHOによる緊急事態宣言、国際協力を訴える

photo by babasteve

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