異常気象、地球温暖化に関する報道と科学的議論
(小論文時事問題)


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近年、世界各国における異常気象と、それに伴う甚大な被害が報道さることが多くなっている。一般的に、異常気象の主原因は地球温暖化であり、地球温暖化の主原因は二酸化炭素だといわれている(1-2)。ここでは、異常気象、地球温暖化、二酸化炭素の関連性、危険性に関する議論を解説する。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル、全世界の科学者・政府に強い影響力を持つ)は、地球温暖化が社会や生態系への深刻な脅威であると指摘している(1-5)。この100年間で世界平均気温は0.85℃、海水温は0.5℃上昇しており、今世紀末までには平均気温が4.8℃、海面水位が82cm上昇するなど、深刻な環境災害リスクが予測されている。これにより、臨海都市の水没、洪水被害の拡大、生物種の大量絶滅、食糧危機など、全世界的に深刻な影響がでる可能性が高い。ただし、現在の異常気象の原因が地球温暖化によるものかどうかは、意見が分かれている(3)。将来的な災害の予防に向け、地球温暖化の原因である二酸化炭素排出量を削減するため、国際的な取り組みが必要とされている。しかし、1997年に京都議定書で取り決められた、各国の温室効果ガス(主に二酸化炭素)削減目標はほとんど達成されていない。

一方、二酸化炭素濃度増加と地球温暖化は無関係だと主張する科学者も少なくない(6-7)。2002年以降、継続的に二酸化炭素濃度が増加しているにも関わらず、世界平均気温が0.2℃程低下しているからだ。むしろ、原因と結果が逆であり、地球温暖化が原因となって海水温が上昇し、海中に溶けている二酸化炭素が排出されているというのだ。そもそも地球温暖化は複数の原因が絡み合っており、科学的には二酸化炭素の温室効果は影響力が弱い部類に属する。地球温暖化のその他の要因としては、太陽活動、宇宙線、地軸や地球軌道の変化などがあげられている。彼らは、科学的根拠の薄い二酸化炭素犯人説をもとに地球温暖化対策することで、本当の原因を見失い、取り返しのつかない事態となることを危惧している。

さらには、そもそも地球温暖化と異常気象を結びつけること自体が間違っていると主張する科学者もいる(8-9)。彼らは前段落での仮説を支持しつつも、人類の存続を脅かすような環境変化を否定し、長期的な適応策を講ずるべきだと提案している。もし仮に二酸化炭素が地球温暖化の原因だとしても、地球上の化石燃料から排出される二酸化炭素量には限界があり、世界平均温度は2℃上昇に留まるという。ちなみに環境省によれば、日本は平均気温3℃上昇までであれば、環境変化に対する適応策があると報告している。さらに、異常気象というイメージだけが先行し、科学的な統計データに基づく、地球温暖化との関連性の議論がなされていない、との指摘もある。

以上見てきたように、異常気象と地球温暖化、二酸化炭素濃度増加の関連性に対して諸説があり、未だに統一的な見解はない。むしろ、議論が尽くされていない状況で、一方の仮説に基づいて全世界的な方針を決めることのほうがリスクが高い。対立した諸派の研究者が一同に介し、オープンな科学的議論をする場を設けることが、今、最も必要とされているのだ。

※環境問題に関する小論文では、①ある程度専門性のある科学的知識、②思い込みで判断しない情報リテラシー、③早急に結論を出さずに仮説を論理的に判断する、科学的な情報収集能力が求められる。そのためには、新聞やテレビ報道だけを鵜呑みにせずに、専門書籍を調査し、大学教授の記事を探す姿勢が重要である。

○異常気象、地球温暖化に関する報道

(1)クローズアップ現代(主に木本昌秀東大教授への取材に基づく報道)、2013.8.28「連鎖する“異常気象”地球でいま何が」NHK

(2)朝日、毎日、産経各紙の社説

○地球温暖化=異常気象

(3)釜江陽一(地球環境研究センター特別研究員)、塩竈秀夫(同主任研究員)、2014年「この異常気象は地球温暖化が原因?」地球環境研究センター

(4)平林由希子(東京大学総合研究機構准教授)、2013.6.10「地球温暖化による洪水リスクの見通し」Nature Climate Change掲載論文に関する記者発表

○二酸化炭素濃度上昇=地球温暖化

(5)時事公論、2014.4.1「IPCC報告 深刻化する温暖化被害」NHK

○二酸化炭素濃度上昇≠地球温暖化

(6)飯尾俊二(東京工業大学原子炉工学研究所准教授)、2012.6.28「地球温暖化-CO2主犯説を斬る」第2回クオリアAGORA(京都クオリア研究所)

(7)武田邦彦(中部大学総合工学研究所特任教授)、2014.6.5「あまりにも無責任な『温暖化』報道…放送法を見直して欲しい」著者公式HP

○異常気象と地球温暖化に懐疑的

(8)久保田宏(東京工業大学名誉教授)、2014.3.14「温暖化よりも怖いのはエネルギー資源の枯渇だ」国際環境経済研究所

(9)武田邦彦(中部大学総合工学研究所特任教授)、2014.7.26「異常気象か正常化?(5)豪雨事件」著者公式HP

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